archiTV/宇宙とお金

様々な建築イベントが24時間ぶっつづけで展開されるarchTV。
今回初めて参加してきました。
今日の目当ては
・アニリール・セルカン氏による「宇宙と、建築」
・丹下憲孝氏による「お金と、建築」
セルカン氏は非常に多才。一度プレゼンを聞けばわかるが、知性とユーモアに溢れ、ものすごく頭がいい。


彼はトルコに生まれ、ヨーロッパ各地で好奇心の赴くまま、既存の領域に縛られることなく様々な技術を研究し、開発し、応用してきた。と書いてしまえばどこにでもいる優秀な一人として回収されてしまうけれど、その多才さと彼の活躍するフィールドの広さはまさに宇宙級だ。現在は東大大学院建築学専攻助教。
なぜ宇宙かというと彼の作品(どちらも本として出版されている)「宇宙エレベーター」と「タイムマシン」による。宇宙エレベーターは文字通り、宇宙に届くエレベーター。もちろん今のところ実在はしない。発想はユニーク。でもそもそも何の目的で?と思ってしまう人は自分の目をもう少し先の未来へ向ける努力をした方が良さそうだ。そう、彼の目は遠い未来に向けられている。
ある仮想を本気で実現しようとすれば、様々な技術を新たに開発する必要に迫られる。事実、彼はこのプロジェクトに際して実にたくさんの新しい技術やアイデアを生み出した。このプロジェクトをきっかけに生み出されたたくさんの新しい技術たち。それをまた別の見方でどう応用できるのか、その視点がまた新たな可能性を生みだす。だからぶっちゃけてしまえば仮想は何でもいい。そこに絶対はない。強いて言えばそこにロマンがあるかどうか。無理だろうと思われることに本気で取り組む時に生まれる様々な技術がまた新しい未来を描く。彼の原動力はその好奇心が全てだ。
建築に関連する提案はインフラフリーハウスというもので、技術そのものは興味深かったが、建築との関係を議論するまでには成熟していない印象を受ける。僕の解釈では、個々の住宅レベルで自律的なインフラを持つ家を指している。もちろんその自律性に関する技術がまた興味深いものだったのだが。。インフラの自給自足と言えばわかりやすいだろうか。そんな彼の言うこれからの三種の神器は「energy,water,food」だそう。なるほど。
とにかく彼の物事を考える姿勢とそのスマートな切り口にただただ圧倒されるばかりであった。その領域を軽々と飛び越える姿にクリエーターとして尊敬する。最後に彼がくれた言葉…
            「Did you ask a good question today?」
              (人間にも、そしてgoogleにも)
丹下氏の「お金、と建築」はまさに先日の建築夜楽校の延長。

金持ちになりたいなら建築家をやめなさい。話はそこから始まった。クリエイティブに建築をつくろうとすれば膨大な時間と労力が必要となる。契約上支出と収入のタイミングのズレをマネジメントしなければならないし、コンペは勝たなければ時間と労力は報われない。加えて特に海外における建築の契約は日本の常識と大きく異なり、しまいには政治にまで翻弄され、99%つかんでいた仕事ですら平気でポシャる。そのマネジメントは非常に難しい。
それを支えるのは建築をつくる達成感と建築への情熱だけだと力強く語った姿が印象的だ。
ディスカッションタイムにおいて、archiTVの用意した3つの議題は残念ながらほぼ機能していなかったが、それでも議論はグローバル化する経済や設計を取り巻くスピードの変化の中で、建築家としてどんなテーマを持ち、かつ地域性に対してどういうスタンスをとっているのかということに集中した。それに対しては、グローバル化するほど地域性は重要になり、その場をつくっている本質を見抜きながら、やはり人間が気持ちよいと思える空間をつくることが最大のテーマだということだったが、言葉の節々に感じられた選択可能性を担保することの重要性のほうに注目すべきかもしれない。
その地域だけを凝視するのではなく、一度世界に目を向ければ地域性は発見できるという言葉は世界30ヶ国以上でプロジェクトを行っている彼ならではの実感なのだろう。
「デザインは自分の中にあるものではなく、クライアントやその場所にあるものだ。だから自分を作家だとは思っていない。建築言語はグローバルなランゲージだからそこにコミュニケーションが生まれる。その中でクライアントにどれだけ満足してもらえるか、それが最も大事だ」という姿勢は先日の山梨氏のスタンスと非常に近いとともに、シンポジウムでは迫りきれなかった建築的思考の可能性を示唆するヒントが含まれていると感じた。
現実に様々な条件や力に向き合いながら、建築が持つ豊かさを実現しようとする姿勢には、そこに集う学生達の背中を押し出してくれているような包容力があった。
こうして僕のarchiTVは(勝手に)終わりを告げたが、他大の学生と交流できたことは良い刺激になった。ブログでの発信も、もっと多くの人と話をするきっかけになればいいと思う。

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