2010年は、まだまだ先だ。

前回の日記が一ヶ月前。
研究室で手伝わせてもらった住宅が、サイトで広告されて一段落。その直後に窓のリサーチ本が完成して、建築の”クリシエ”をテーマにしたエンリケ・ウォーカーのワークショップがあって、ある会社相手にプロジェクトのプレゼをして、映画を何本か集中して見て、何冊かの小説を読んで、1960年代以降の都市論を何冊かまとめ読みして、いくつか作品をつくって、突然始まったAAとのワークショップを楽しんで、彼らと別れたのが一昨日か。一ヶ月ちょっとはざっとこんな感じだろうか。
・分譲住宅のサイトはこれ。→http://www.yamatedai.net/hiraku/
実際には契約が完了してから実施設計に入る。
・窓のリサーチのまとめとして、今回は窓のもつコンセプトを抽出するということをした。コンセプトとして取り出せばそれは今度はそれがデザインの問題になることに気づく。窓のいろんな形式や大きさや厚さや、窓周辺のものとの関係は、その窓が何を扱い、何をしようとしているのか、どういう考えをもっているのかという視点でみると、いくつかのまとまりに見えてくる。この手続きは論文と同じだ。
で、原さんの「集落の教え100」はまさにコンセプトブック。あれは本当に面白くて、ほとんどのコンセプトは、人間のちっぽけな身体性なんかほとんど気にもとめないような、もっと大きな自然とか環境に対する知恵みたいなものとして提示されているところがいい。
そして先生によるコンセプトブック、「空間の響き/響きの空間」は色んなもののありかたやものとの関係についての想像力を開いていくことの驚きや豊かさ、知性が凝縮されている。「お面」と「居候」の考え方が好き。前者は定型の持つ豊かな意味や知恵を引き受けながら新しいものを生み出して行くことの楽しさと価値。後者は人間がある秩序をもった家に居候すると捉えることでより柔軟で寛容な、住宅と人間の新しい関係への眼差しについて。やっぱり何か人間が主役じゃなくてもいいような空間が、結局は人間にとっても息のつまらない、居心地の良さにつながるんじゃないかという考えは、卒業設計の時から続いているし、「deploma exhibition2009」のフリーペーパーに寄せたエッセイ、「身体性を超えて」というのは、そういうことに繋がっているんだと思う。
今はその辺の想像力をさらに切り開いて行くような、論考や言説を探しているところ。
・映画。「Les Parapluies de Cherbourg」、「life is beautiful」、「二十四時間の情事」、「我が教え子、ヒトラー」「The Shawshank Redemption」、「重力ピエロ」、「Cars」(笑)昔の名作とか全然見てないから、まだまだ時間がかかりそう。。
・AAとのWSはたった4日たらずだったけど相当楽しかった。実は想像以上に共通の意識を持ってて、誰と話してもここまでちゃんと建築の議論ができるとは思ってなかった。ロンドンには行ったことがないけれど、問題意識としてどこか似たものを共有しているんだろうなあ。
このWSは結果的に最終的なアウトプットもチームによって様々で、リサーチを通してどう都市を読んだかというような知的ゲームをするところもあれば、割に具体的なプロジェクトを提示するというのもあって、でもまあどのチームもとても興味深かった。「フォトコラージュ」が方法のしばりであったが、コラージュをつくりながら都市を読むというのは、まさに都市のあり方に身をおくひとつのやりかたで、今までとは違った、「コンテクストを動的に捉える」という感覚に少し近い。
とにかくロンドンの連中がもたらしたこの知的な刺激は、年末気分のゆるみかけた頭にはそれなりに効いたみたい。
自チームのリサーチ対象地区だった品川周辺は、よくよく観察してみると、もう悲しさを通りこして開き直って笑っちゃうくらいダメダメな都市で、いろんなことがうまくつながらず、いろんな時間がうまく噛み合っていない、そう映る。でもそんなことはおかまいなしに超優良企業のオフィスが次から次へと集まるし、相変わらず交通の要所としての重要度は増すばかり。かたや何千という豚や牛がトラックで運ばれてきては、オフィスビルの建ち並ぶそのど真ん中で食肉に変えられて行く。モニュメンタルな東口の広場は、強い軸性をもった道路が海岸まで開けていれば、まだリスボンの矮小番くらいにみなしてもいいのかもしれないけど、実際見えるのは東洋水産のビルとまるちゃんのマークのみ。これはもう笑うしかない。色んな力は持ってるはずなのに。そこで自チームは食肉加工場をリニアに駅と高層オフィス群、運河を横断するようにつきさして、ばらばらに孤立しているものを無理矢理衝突させるという提案をした。品川みたいに時間をうまく都市のなかに内包できていない場所を、東京のなかでもう少し発見できるとすれば、修士制作は何かそういうことをテーマにやってみたい。そんなことを考えている。
そう簡単に2009は終わらせないぞ。
品川4発







5 Comments

  1. maa says:

    2009年12月22日 at 10:32 AM

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    おー、充実した日々!
    品川4発の写真、4枚目のやつがなんだか「スワロウテイル」に出てきそうだね。フォトコラージュせずともコラージュされているような都市というか、そんな「笑える都市」って実は程よいゆるさがあっていいのかもよ?あくまで「程よい」ってのがミソだとは思うけど。
    てか、修士制作なんだね!確かに、今思えば制作だと後々いろんな人にいろんなカタチで見せられるし、いいかもと思うなぁ。
    2009、まだまだ終わらせないでいきましょう!

  2. mi says:

    2009年12月25日 at 1:00 AM

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    そうなんですよね、AAの学生も、東京のいろんなシーンを見ては、これはもうすでにコラージュじゃんって笑ってました(笑)ただ品川の場合はそのコラージュの間に有機的な関係がないんですよね。本当にそれぞれ勝手に自分の場所に自分の完結した世界をつくってるだけで。
    僕はやっぱり、つくる回路を回してないとなかなか論文も吸収できないんですよね(笑)卒論でやったことをデザインの実感として自分のものになったなっていう感覚をもったのも卒制を通してだったし。どっちにしろ枠組みをきちんと説明しようとすれば、論文に匹敵するものも一緒につくれると思うんですよね。だからずっとおれは制作だって、勝手に言い張ってる感じです(笑)忘年会来ますよね?楽しみっす!!

  3. mayu-go says:

    2009年12月31日 at 2:19 AM

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    品川はホント色んな要素が唐突に現れてくるから既にコラージュっていうのも納得(笑)ブラタモリ(最近はまってる番組なんだけど)でも取り上げられていて、未だに井戸を使っている住宅地があるそう・・・運河沿いの倉庫を改装したカフェが気になります☆昔はその斜め前がSANAAの事務所でした。
    そーいえば最近、知り合いに学校で血だらけで倒れてる女の子を助けたって方いませんかね!?そんな話を小耳にしたらご一報下さい。詳しい話は来年にでも(笑)
    ではではよいお年を~~☆☆☆

  4. mi says:

    2010年1月4日 at 1:05 PM

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    明けましておめでとう。へー色々知らないとこがあるんだね。
    血だらけの人は知りません(笑)
    またそのうち会いましょう。

  5. mayu-go says:

    2010年1月14日 at 7:37 AM

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    うん、会おー。
    最近のバッタリ率はめっきりですな(笑)
    あ、遅ればせながら・・・
    明けましていめでとう☆

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