民家と城端

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善徳寺の門前町として栄え、歴史的な町並みの面影を残す南砺市城端エリアに移住を決めた若い夫婦は、将来的にゲストハウスを営むことを視野にいれ、築50年ほどの民家を購入した。窓が多い無断熱の民家はそれなりに傷みがあったので、新たな生活が始められるよう、2階はそのままに、1階部分の断熱・耐震改修を通して、夫婦の生活空間とゲストハウスの共用部分をつくることが求められた。

 城端駅から民家へ至る道のりは印象的であった。町家の並ぶ通りを抜けて坂道を登り、美しい木彫が目を引く善徳寺山門を過ぎて、細い路地を下ってゆくと、趣のある家屋や絹織物工場、川の水面が次々と目に飛び込み、ふと遠く山並みまで視線が抜ける。変化に富むこのシークエンスと地続きであるような建築をつくろうと考えた。 限られたコストのなかで効果的に断熱・耐震改修するため、外壁にはできるだけ手をつけず、室内側から改修する方針とした。これにより、生活の跡が染みついた内装をやりかえ、風景に溶け込んでいたトタン外壁の佇まいを活かすことができる。
断熱性の乏しい既存アルミサッシは、同じサイズの”出窓”に置き換える。出窓化することで、ガラス面積を絞ることができ、既存外壁との取り合いもシンプルになる。三角形の平面形状をした出窓は、さまざまな角度をもって周辺の環境に向き合い、内部空間を押し広げる。その結果、アプローチを向いたショーケース、旧市街地を望むベッドのヘッドボード、庭の小道と連続したダイニングのベンチ、遠くに山並みが見える縁側といった具合に、新しい機能が周辺環境とのかかわりあいのなかに発見された。これらは、無味乾燥な機能ではなく、歓びや快適さを伴った、この”場所ならではのやり方”である。出窓は杉の下見板で覆った。経年変化したトタンの外壁に、真新しい杉板貼りの出窓が踊る、異なる時間を含んだダイナミックな外観となった。 
プランは、間仕切り壁を間引く程度の変更にとどめ、玄関ホール、共用ダイニング、プライベートルームの3つの空間に分けた。これら3つの空間には回遊性をもたせ、補修した雪見障子や引き戸を再配置して、フレキシブルに使うことができるようにした。サイズの同じ建具を使い回せる、民家の優れたモデュールシステムは秀逸だ。余った建具は倉庫に保管され、静かに出番を待っている。 

特徴的な出窓による変化に富んだシークエンスは、この建築固有の体験であるが、町の環境を体感することで際立ち、一方でこの建築の体験が、見慣れた環境を異なったものに見せる。このように、建築と環境が絶えず互いを刺激し、更新し続けるような関係をつくれないだろうか。その関係のなかで人間は、より創造的に環境と戯れたり、環境を使いこなすことができるのではないか。 


場所:富山県南砺市 
用途:住宅兼ゲストハウス(ゲストハウス部分は未改修)
構造:木造 地上二階建て 
建築面積:79.50㎡ 
延床面積:116.76㎡ 
改修部分面積:79.50㎡ 
施工:堺谷建築 
写真:竹内吉彦

民家と城端

善徳寺の門前町として栄え、歴史的な町並みの面影を残す南砺市城端エリアに移住を決めた若い夫婦は、将来的にゲストハウスを営むことを視野にいれ、築50年ほどの民家を購入した。窓が多い無断熱の民家はそれなりに傷みがあったので、新たな生活が始められるよう、2階はそのままに、1階部分の断熱・耐震改修を通して、夫婦の生活空間とゲストハウスの共用部分をつくることが求められた。

 城端駅から民家へ至る道のりは印象的であった。町家の並ぶ通りを抜けて坂道を登り、美しい木彫が目を引く善徳寺山門を過ぎて、細い路地を下ってゆくと、趣のある家屋や絹織物工場、川の水面が次々と目に飛び込み、ふと遠く山並みまで視線が抜ける。変化に富むこのシークエンスと地続きであるような建築をつくろうと考えた。 限られたコストのなかで効果的に断熱・耐震改修するため、外壁にはできるだけ手をつけず、室内側から改修する方針とした。これにより、生活の跡が染みついた内装をやりかえ、風景に溶け込んでいたトタン外壁の佇まいを活かすことができる。
断熱性の乏しい既存アルミサッシは、同じサイズの”出窓”に置き換える。出窓化することで、ガラス面積を絞ることができ、既存外壁との取り合いもシンプルになる。三角形の平面形状をした出窓は、さまざまな角度をもって周辺の環境に向き合い、内部空間を押し広げる。その結果、アプローチを向いたショーケース、旧市街地を望むベッドのヘッドボード、庭の小道と連続したダイニングのベンチ、遠くに山並みが見える縁側といった具合に、新しい機能が周辺環境とのかかわりあいのなかに発見された。これらは、無味乾燥な機能ではなく、歓びや快適さを伴った、この”場所ならではのやり方”である。出窓は杉の下見板で覆った。経年変化したトタンの外壁に、真新しい杉板貼りの出窓が踊る、異なる時間を含んだダイナミックな外観となった。 
プランは、間仕切り壁を間引く程度の変更にとどめ、玄関ホール、共用ダイニング、プライベートルームの3つの空間に分けた。これら3つの空間には回遊性をもたせ、補修した雪見障子や引き戸を再配置して、フレキシブルに使うことができるようにした。サイズの同じ建具を使い回せる、民家の優れたモデュールシステムは秀逸だ。余った建具は倉庫に保管され、静かに出番を待っている。 

特徴的な出窓による変化に富んだシークエンスは、この建築固有の体験であるが、町の環境を体感することで際立ち、一方でこの建築の体験が、見慣れた環境を異なったものに見せる。このように、建築と環境が絶えず互いを刺激し、更新し続けるような関係をつくれないだろうか。その関係のなかで人間は、より創造的に環境と戯れたり、環境を使いこなすことができるのではないか。 


場所:富山県南砺市 
用途:住宅兼ゲストハウス(ゲストハウス部分は未改修)
構造:木造 地上二階建て 
建築面積:79.50㎡ 
延床面積:116.76㎡ 
改修部分面積:79.50㎡ 
施工:堺谷建築 
写真:竹内吉彦
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