地と橋

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敷地という主体/共存するボリューム
建主とわたしは敷地を探した。街なかの喧騒から少し離れ、急な坂道を登った先にある山の上の閑静な住宅地の一角を、建主家族はみずからが生きる場所に選んだ。敷地は角地で見晴らしが良いが、周辺のそれと比べると幾分小さい。かつてそこにあった住宅がガレージを含む擁壁ごと解体されたため、敷地内に不自然な盛土が残っていた。北向きの盛土は斜面であるがゆえに陽あたりがよく、近くの雑木林から野鳥が持ち込んだと思しき草木が茂り野花が咲く。普通なら敬遠されそうな敷地に広がる、生命力溢れる野原はわたしたちを魅了した。この時点で敷地は、単なる建築の下地でもなければ、建築がどうこう料理する材料でもなく、ともに生きる環境としてそこにある。だから住み手が生活を通して、長い時間のなかでその環境と対話し、都度環境との新しい関係を発見していくような、刺激と創造に満ちた世界をつくることが、建築の目的だと考えた。

積雪寒冷地の住宅は、断熱性能を備えた壁、床、屋根でぐるりと覆うのが原則である。また今回のように比較的小さい土地では、積雪や落雪を考慮すると不用意に軒や庇を設けられない。だから建築を箱状の立体=ボリュームの組み合わせと捉え、その立体と敷地の関係性を考えることで、特徴的で美しいこの土地ならではの暮らしとつくれるのではないかと考えた。
この敷地の魅力は、高低差のある大地を治めるための擁壁や斜面の盛土による立体的な環境、そしてそこに広がる野原である。野原には雨が流れ、雪もかなり積もるから、そうした変化や影響を直接受けずに外を眺めていられるような場所がこの住宅の中心的な居場所になるだろう。そのために橋のようなボリュームを浮かべた結果、野原には雨よけと日陰が生まれ、ずっと野原にいることもまたできるようになった。敷地環境の魅力を高めるこの”橋桁”じゃ、その外側に存在する野原や空、階段や続き間などのすべてを等価に繋ぎ止める、関係性の起点であり続ける。

地と橋

敷地という主体/共存するボリューム
建主とわたしは敷地を探した。街なかの喧騒から少し離れ、急な坂道を登った先にある山の上の閑静な住宅地の一角を、建主家族はみずからが生きる場所に選んだ。敷地は角地で見晴らしが良いが、周辺のそれと比べると幾分小さい。かつてそこにあった住宅がガレージを含む擁壁ごと解体されたため、敷地内に不自然な盛土が残っていた。北向きの盛土は斜面であるがゆえに陽あたりがよく、近くの雑木林から野鳥が持ち込んだと思しき草木が茂り野花が咲く。普通なら敬遠されそうな敷地に広がる、生命力溢れる野原はわたしたちを魅了した。この時点で敷地は、単なる建築の下地でもなければ、建築がどうこう料理する材料でもなく、ともに生きる環境としてそこにある。だから住み手が生活を通して、長い時間のなかでその環境と対話し、都度環境との新しい関係を発見していくような、刺激と創造に満ちた世界をつくることが、建築の目的だと考えた。

積雪寒冷地の住宅は、断熱性能を備えた壁、床、屋根でぐるりと覆うのが原則である。また今回のように比較的小さい土地では、積雪や落雪を考慮すると不用意に軒や庇を設けられない。だから建築を箱状の立体=ボリュームの組み合わせと捉え、その立体と敷地の関係性を考えることで、特徴的で美しいこの土地ならではの暮らしとつくれるのではないかと考えた。
この敷地の魅力は、高低差のある大地を治めるための擁壁や斜面の盛土による立体的な環境、そしてそこに広がる野原である。野原には雨が流れ、雪もかなり積もるから、そうした変化や影響を直接受けずに外を眺めていられるような場所がこの住宅の中心的な居場所になるだろう。そのために橋のようなボリュームを浮かべた結果、野原には雨よけと日陰が生まれ、ずっと野原にいることもまたできるようになった。敷地環境の魅力を高めるこの”橋桁”じゃ、その外側に存在する野原や空、階段や続き間などのすべてを等価に繋ぎ止める、関係性の起点であり続ける。

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