丘を目指して/多摩美術大学図書館

11日、夕方学校を抜け、多摩美へ向かう。
菊名でJR横浜線に乗り換えて橋本へ。序々に風景が郊外っぽく変化していくのを感じる。どちらかというとなじみのある風景。橋本駅で降りてさらにバス。多摩美関係のバス停がいくつもあってどこで降りていいのかわからなくて焦る。が、バスの運転手に色々質問する感じはちょっとした旅行の感覚を思い出させた。また旅をしたいという強い衝動にかられる。多摩美の図書館が見えてすぐにバスのブザーを押したら、学校の入口から遠い中途半端なところで降りるはめに。
まさに「丘」としか言いようのない丘がぽこぽこ重なりあうようにして風景ができている。日は暮れかけていたけどすごく気持ちがいい。正門を抜けると左手に少し急なスロープが伸び、矩形の建物が丘の上にランダムに建っている。その一番手前に多摩美術図書館がある。

図書館は斜面を飲み込んでいて、外壁と平行に伸びる外のスロープと非常にいい関係をつくっている。天井は水平だからスロープの終わりほど天高が低い。天高の大きな手前の空間はテーブルや丸い球状の椅子が散らばって人の居場所ができている。梁にはスクリーンやプロジェクターが隠されていたり。斜面を利用して客席をつくったりできるのだろう。広い空間において自由に移動できる家具が人の動きの軌跡をとどめる様子は西沢立衛氏の30代建築家100人会議の時のスツールを思い起させる。

ガラスで区切られた図書館領域へ入ると新刊雑誌コーナーと個別AV、PCスペース。斜面に沿ってにまばらな映画館の座席みたいにブースが並ぶ。椅子が気持ちよくてきっと寝てしまいそう。スロープを下りきった隅に大きなベンチのようなベッドのような家具。普通に学生が寝ている。いつも誰かかれかが横になったり普通に寝たりしているらしい。公共の施設には寝そべったりする場所なんてなかなか無いから、いい場所だなと思った。ガラスの向こう、外の芝生にも学生が寝そべっている様子が目に浮かぶ。丘がそのまま建築に取り込まれたような連続性のあるのびのびとした一階。
二階は一階とうって変わって、非常に静かで落ち着いた雰囲気。行った時間帯(夕方)も関係あるかな。二階の床は水平だから、一階と比べると視線が自然に上に向かうように錯覚して、とても大きくてすっきりした空間に感じる。実際天井は高いが。単純な幾何学で制御されないアーチは居場所によって色んな重なり方をするからおもしろい。樹々をすり抜ける感覚と似ている。夜だったから外はあまり見えなかったが、樹々の葉が近い。景色が開ける側と、大学の建物やキャンパスなどが見える側では全然見え方が違うのだろう。外周にまわされた外向きの机が気持ちよさそう。昼間を想像してみる。イチョウの葉のようなプリントが施された大きなカーテンから透ける光は、学生の間でも評判がいいそうだ。
中をぶらぶらする。緩やかに曲がる本棚に沿って気付かないうちに結構歩かされている。緩やかな曲線を描いて伸びる低い本棚ごしに全ての空間と外の景色が見渡せる。うねる本棚とアーチが生む体験は新鮮。

本棚が低いせいで、大型の美術書なども全部しゃがんで見て取り出さなければならず、不便な感じもするが、一方で低さゆえに本棚の上に本を広げて眺めることができたりという振る舞いが自然に生まれていているのはいいなと思った。
ただ、二階建ての閉架書庫が奥に詰め込まれていたり、カウンターまわりにいわゆる普通の背の高い本棚がズラッと並んでいるところとか、図書館としてうまくいっているのかは疑問が残る。全体的に図書館という機能や物理的な本の存在は二次的なもので、中身は何でもよさそうに見える。本棚のスタディも、建築がフィックスしてからの話だったように思う。そういう意味でこの建築は自立している。建築が自立する自由さと脆さみたいなものを感じた。建築の性能だとかその使われ方だとか、そういった要請や条件は決して建築をつまらなくしたり、不自由にさせるものではないだろう。それらが両立する状態、補完しあう状態というのが必ずあるはずで、それは単に合理的という言葉では説明できない豊かな状態を生み出すはずだと思うのだが。
多摩美内をふらふらさまよった後、テキの友達の展示を見てそのまま一緒に居酒屋へ。独特なマイペース感は話していておもしろい。
終電手前で学校に戻る途中、JA70刊行記念パーティと称するものがまさに始まろうとしていると後輩から聞き待機。こぢんまりと集まった4人でさっそくJA70について議論。大いに笑いながら議論はすすむ。早く手に入れないと。
解散後は研究室で朝まで一人模型作り。別に一人で頑張っているのだといいたいわけではなく、ただ夕方抜けた償いに、飲んだ体で仕事をやっていただけのこと。。
建築も見れたし、刺激的なことが目白押しな一日でした。

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