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まず告知から、「第18回東京都学生卒業設計コンクール2009」に出展します。
ほぼ丸一日かけて行われる公開審査は生の議論が聞けるいい機会だと思います。
お時間あれば是非。
概要 
審査委員長:北山恒氏
審査副委員長:小玉祐一郎氏
審査委員:東利恵氏
審査委員:岡村仁氏
審査委員:ヨコミゾ マコト氏
日時:2009年5月30日(土)9:30~17:00公開審査/5月31日(日)10:00~15:00展示
場所:新宿・工学院大学キャンパス1階アトリウム(東京都新宿区西新宿1-24-2)
入場:無料
審査員と距離が近い講評会だから楽しみです。是非話したい。懇親会もあるようなので。
そういえば2ヶ月前に参加した「卒、」。
中山さんと藤村さんと議論したことをやっと消化することができた。
「コンストラクションとコンポジションの関係」、「複雑性」、中山さんが飲み会の時に評価してくれた、「まわりくどさ」感覚。
「ハウス・アサマ」の屋根、分節される空間のプロポーション、行為、窓の意味、それらが構造化された全体、がその全てを説明してくれた。構造化だろうか、建築と彫刻の違いのひとつは。気づいてしまえば何も難しいことは言われてないのに。シンプルでいいなあ。そんなに複雑じゃないと思う。建築の設計は。でもつまらないシンプルじゃない、今言っているのは。そういうことじゃない。そのシンプルさに到達した感覚は残念だけどまだないな。
文脈は違うけどいい意味のシンプルさで最近感動したTse Su-Mei。水戸で見てきた。めちゃいい。

"人図"をつむいで

3月の終わりにオーストラリアへ行き、環境と人の生活と建築の関係と、豊かな自然と豊かな生活に感動し、帰国一週間後に訪れた金沢で伝統工芸の素晴らしさと、文化があるという歴史の重みを初めて実感した。
ブリズベンは本当に素晴らしい所だった。皆が生活の中に、ごく自然に気取らず、構えることのない娯楽をもっている。それはいたるところで街の表情となってにじみ出て、建築にも表れる。

シドニーのオペラハウスはその圧倒的な存在感と、複雑な全体の形態からホールへのアプローチ、そしてタイルの割り付けにまで及ぶデザインの異常な射程に、自分は一体その入り口すら見ることができるのだろうかという未知の領域を感じた。
旅はいつも多くの価値観を揺さぶり、膨大な情報をいっぺんに投げつける。
それが豊かさへの第一歩と言えば言い過ぎな気もするが、帰国後に決めた朝早く起きるという習慣が自然に身に付き、九谷焼の文様がまだ時々頭を駆け巡る頃、今度はこのGWで北関東ー群馬・栃木・茨城ーを周ることになる。
レーモンド、磯崎新、妹島和世、隈研吾、野沢正光を見た。
群馬音楽センターはホールと二階のロビーが同じ原理で反復する折板構造の空間を二分しただけなのに、全然違う空間をつくっていることに驚いた。井上邸では、鋏状トラスが単なる意匠ではなく、資材不足・高騰等の諸問題を乗り越える中で生まれたテクノロジーだということを知って、衝撃を受ける。家具とか建具もすごくいい。

磯崎新はいつも全体像をバラバラに分解する。執拗にレトリカルで、スケールは人間を無視するかのように調整される。ただこの突き放すようなスケールは人間という主体と別の論理でできているように思えて、人間の身体性ばっかりが根拠になる建築のもつ「よけいなお世話感」に比べれば、今の僕は断然そっちの方に興味が湧く。群馬県立近代美術館と水戸芸術館を見て、広場の作り方がうまいと思った。

鬼石は今までにない不思議な空間体験と、何より建築家が建築を通してこの小さな街の在り方を、風景からも、人々の関係性からも大きく変えようとしていること、つまり枠組みの提案でもあることがすぐわかり感動。体育館で子供たちがバスケをし、孫をのせたおじいちゃんの自転車が建物の間の道を通り抜け、入り口で車をとめたおじさんたちが大声で話をしている。建物に沿った公園を散歩する夫婦がガラスの向こうに見え、管理人のおばさんが掃除をしている風景が同時にそれぞれに展開する。例えば平田さんの同時存在の感覚とはまさにこのことだ。作品集で見てた印象とはいい意味で全然違う。大きさも、周辺の公園や住宅との距離も、高低差も…
ただ雨漏りがあって、夏はものすごくものすごく暑いという話を聞くと野沢さんのような建築の方が住民には愛されるのかもしれない。チャレンジングと言えるのかどうかはわからないが、絵本の丘美術館は地元の素材を使った、こじんまりとしているが住宅のようになじみやすいものだった。

馬頭町広重美術館は最も良かったかもしれない。
確かにこの建築では、素材が建築の「存在」の問題に向き合うものとして最も先鋭化するというのが理解できる。新しい素材の使い方をテクノロジーのレベルで、今後も反復可能なものとして、かつデザインのレベルにも引き上げるというのはどういうことか目の当たりにした。ルーバー、深い庇、庇高さ、ガラス、和紙、が無駄なく、無理無く調整されている「うまさ」を強く感じる。
そこで「自然な建築」を買った。思ったより最近の本だった。「建築を存在として捉え直す」という言葉が気にいった。必ずいつも素材というかたちで存在の問題に向き合えるのか?という疑問はあるが、それについてはまた別に考えることがあるので今は伏せておこう。
大学2年のとき、造形演習という授業で「秘密」について考え作品をつくったことがある。
「情報として僕が受け止めることができた時点で、それはもう秘密ではないのです。秘密は僕自身、あなた自身のものであって、情報として出力されるものではないからです。僕にとって秘密とは、”僕の秘密”でしかあり得ない。どこで誰とつながっているか。僕自身もわからない。僕にしか感知できない。誰もが持つたった一つだけの秘密。一枚の地図とその余白。言うなればそれは、人と人とを結んだ僕だけの人図。」

隈研吾、井上房一郎、タウト、ターナー、ライト。。
”人図”がこの旅と本をきっかけにまた回り始めた。

卒、

3/18(本日)から横浜のZAIMというギャラリーで行われる卒業設計展「卒、」に出展します。時間のある方は是非足を運んでみてください。
ということで模型やパネルを設置するために一足早くZAIMに行ってきました。
学生主体で運営される展覧会で、出展者も運営者も関係なく展覧会をつくっていくというコンセプトなのだが、今までほとんど何も手伝えず…冷たい目で見られることを覚悟で模型を設置しに、のこのこ顔を出したのだけど、暖かく迎えてくれました。運営委員として関西から駆けつける人もいたりで、昔関西で参加したWSつながりを発見したりと、出会ったことの無い人に接するのはやはり新鮮で気持ちがいい。自分と向き合って生まれた作品を通して色んな人に出会えるのだから、こういう機会は大切にしなければ。
大きな空間にずらっと展示される形式ではなく、一部屋で7、8作品を展示するという、作品を楽しめるスケール感がとても良かった。部屋によって明るさや窓から見える景色が違って空間の雰囲気が全然違うのは、卒業設計という作品の性格上好ましいように思える。
僕の展示部屋は真白な部屋の向こう窓一面に、隣の建物の赤レンガが見えて、なんとも横浜らしい。昼でも光が強くないので照明を使っているのだけど、たまたま集められた作品のトーンに合っていて落ち着いた、いい展示空間になっていると思います。多分。20日まで展示されているので是非のぞいてみてください。

圧倒的なもの

仙台負けました。
色々勉強しました。
敗因のひとつは模型をのぞかなければ自分の主張を伝えることができないこと。パネルとしてA1が10枚とかある時は、図面や絵で模型に人を導くことができたのに比べて今回はA1一枚。それに対する模型のインパクトとわかりやすさに欠けていた。700余の作品が集まるせんだいは無差別コンペのようなもの。伝わらなければ意味がない。誰も歩み寄ってはくれない。形態や形式のわかりやすさに頼ることなく、しかし圧倒的なもののちからと魅力をもつもの(両者は対立することでは決してないが)。バックグラウンドもプロセスもささいなきっかけとして消えていくような。
行き着きたいのはその射程。
伝えたいことは山ほどある。
一度立ち止まってもらえれば、その決断を後悔させない自信はある。
自分が建築に対して持っているリアリティと評価軸にいくらかのズレ、或は絶対的な断絶があるかもしれない。またそうであって欲しいと思う。
そんなことを問題にさせないくらいの、圧倒的なものをつくらなければならない、と強く感じさせられた、せんだい。
色々な主体にあっさり憑依もしくは変身しながらつかむ固有の身体感覚と客観性の間。そこにある現代性。一年前、始めたばかりのブログで主張した身体感覚と社会性の話は乗り越えた。
客観的。他人。そういうところからどれだけ建築を説明(というか表現)できるのか、全然うまく説明できなくて、キーワードも心もとないが、そういう関心を持っている。

今から

仙台行ってきます。
仙台行く人は、僕の作品の前でどよめいてください。
応援よろしくお願いします。

complex of phenomena

「complex of phenomena」
気候や時間の変化によって起こる現象が人と人の関係や人とものの関係、人と場所の関係にどういった影響を与え、どんな関係性を現象させ、どんな場所を生み出すのか。環境的コンテクストと社会的コンテクストの間に、どんな固有性を見出せるのか。
敷地は北の港町、北海道釧路。夏でも涼しく、海霧が頻繁に発生して街を覆う。霧の中で無限に拡散する光は幻想的で、非常に美しい夕陽が港の向こうに沈む。これらの自然現象は街の表情をがらりと変え、釧路の生活は常にそういったリズムと共にある。一方、中心市街地は駅前大通りを軸とする都市構造から、美術館や飲み屋街などの文化的ストックが並ぶ川を軸とする構造に変化した。そこで川と大通りの交点に、自然現象が新たな人の居場所や関係性を生み出すような建築を構想する。プログラムは市場とスパ。二次曲面が連続する架構は流れる霧、差し込む冬の光や夕陽に敏感に反応し、様々な場所をつくる。屋根裏をなめるように入る光が空間の表情を大きく変化させ、屋根と屋根の交線がつくる曲線のグリッドは平面に流れを生み出す。低く伏せた厚い屋根は厳しい気候に対する安心感を生み、奥行きのあるやわらかい光を取り入れる。自然現象というと曖昧で抽象的かもしれないが、漁業や炭坑などの産業が衰退していくのを目の当たりにした今、頼りない産業にすがり、一時的な流行に乗るよりもずっと確かなリアリティがある。固有の現象を空間に参加させ、社会的コンテクストとの重なりの中で新たな関係性を現象させることに建築の可能性を見出した。














宮城島崇人

合同講評会


プレゼン風景。実はこの夕陽の写真は祖父の作品。安田講堂でじいちゃんと夢のコラボ。
先日行われた三大学講評会。グランプリは逃したものの、個人賞として岸健太賞を受賞しました。岸先生、素敵な本をどうもありがとうございます。松原さんにも評価していただきました。壇上で、これいいなあとおっしゃってくれたのが印象的でした。
講評に参加していただいた建築家のかたがた、スタッフをしてくれた先輩達、ありがとうございました。
とはいえ、あの枠組みなき講評には少々がっかりです。議論も批判も無かったと言っていい。
このままでいいのか、こんなことでいいのかと釘を指した松原さんの言葉があの講評会の中で、最も正しくシャープだったと思います。誰の何が、どういう枠組みの中で評価されたのか全くわからない講評会でした。これを見に来ていた学生は何を思って会場を後にしたのかと思うと非常に残念です。
打ち上げでは松原さんを初め、色々な方と話ができて刺激になった。二次会には石上さん、六角さん、岸さんをはじめとする芸大チームが学生に合流。有意義な時間を過ごす。非常に良かったというねぎらいの言葉を方々からもらい、テンションが上がると同時にアピールしきれなかったことに反省。
息つく暇無く仙台へ模型、プレゼンボード等搬出しました。もう今週末か。
どんな出会いがあるのか楽しみだ。どこまでいけるか勝負。

from switzerland

三大学講評会の準備を、仲間たちとへろへろになりながら進めています。
打ち合わせには遅れるし、迷惑かけてばかりのうえ、ちょっと周りで何が起こっているのか把握できていない。。
今日は東大・芸大の発表者とともに軽くプレゼンリハ。
刺激になる。自分の全然準備が進んでない。が、まだまだこれから。
そんな疲弊しきった僕に嬉しいニュースが。
先輩がブログで激励してくれていました。→http://d.hatena.ne.jp/byebye_berri/20090226
一年前に卒業設計を手伝わせてもらい、今回の卒制でもスイスから色々と助け舟を出してくれていた森中さんです。スイスでばりばり活躍しているようで、色々教えてくれるブログやメールは僕にとって貴重な情報源です。
早く日本で飲みましょう。待ってます。
というわけで、リンク追加です。
「占拠の、その後。」

卒制は終わらない



二日にわたって行われた学内講評会において、大岡山建築賞金賞を受賞しました。
手伝ってくれた人たちにいい報告ができて良かった。ありがとう。
講評会では狙い通り建築そのものやデザインの議論ができてよかった。と同時に一番当たり前だと思って特に言及していなかったことが実は一番伝わってないということを実感して反省。議論が終わる頃には大事なことほとんど全てを教授陣や観ていた人に伝えきった手応えを感じたので、まあギリギリ良しとしよう。非常に濃い議論ができて楽しかった。
さしあたり、
3/1に行われる「2008年度卒業設計合同公開講評会:東工大×藝大×東大」(概要下記)に出展します。自信を持って自分の建築をぶつけます。安田講堂ジャックです。準備に追われているも非常に楽しみ。毎年行列必至の講評会ですが、時間と興味がある人は是非見に来て盛りあげてください。よろしく。
加えて、
近代建築別冊『卒業制作2009』に代表として掲載予定。
デザインリーグ卒業設計日本一決定戦・横浜赤レンガ展・東京都学生卒業設計コンクール2009に出展予定。
詳細はそれぞれ随時更新します。応援よろしくお願いします。
2008年度卒業設計合同公開講評会:東工大×藝大×東大
●開催日時:3/1(日)14:00~18:00
●会場:東京大学本郷キャンパス安田講堂(東京都文京区本郷7-3-1)
ゲストクリティーク:石上純也、菊竹清訓、岸健太、佐々木睦朗、長谷川逸子、松原弘典
本年度退職される教授:坂本一成(東工大)、六角鬼丈(芸大)、鈴木博之(東大)
●定員:1200人
●参加費:無料
●問合先:卒業設計三大学合同講評会実行委員会/E-mail:jointcritique@gmail.com